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本学教員の研究成果が、米国化学会の学術誌 Langmuir に公開されました。

投稿日:2026/07/13 研究・プレスリリース

本学教員の研究成果が、米国化学会の学術誌 Langmuir に公開されました。

界面活性剤の分子集合体「ベシクル」から「コアセルベート」へ
― 化粧品にも使われるありふれた塩の濃度ひとつで内部に空隙をもつ新しい階層構造をつくり分け

工学部 医薬工学科の秦 慎一 講師は、国内外の研究機関との共同研究により、ごく単純な界面活性剤混合系で、沈殿を伴わずに「モノマー(ばらばらの分子)→ ベシクル(袋状の膜)→ コアセルベート(濃く集まった液滴)」へ至る形成経路を確立し、その内部構造をクライオ電子顕微鏡でとらえました。本成果は2026年7月10日、コロイド・界面化学分野の中核誌である米国化学会 Langmuir にオンライン公開されました。

一級アンモニウム界面活性剤 DeAB と芳香族塩 NaSal(サリチル酸ナトリウム:医薬品や化粧品にも使われる身近な塩)の二成分系で、NaSal 濃度を変えたところ、低濃度では多重ラメラベシクルが、高濃度では液-液相分離(溶液が濃い相と薄い相に分かれる現象)による濃縮液相(コアセルベート)が沈殿を伴わず生じました。従来コアセルベートは均一な濃い液滴と考えられてきましたが、本研究では電子顕微鏡観察により、内部に持続的な空隙(中空構造)とラメラ状ナノ構造が共存する階層的な集合体であることを解明し、これを VHC(空隙を内包する階層的コアセルベート、Void-bearing Hierarchical Coacervate)と名づけました。

本研究のベシクルは、リポソームや脂質ナノ粒子といった薬物キャリアと同じ構造ファミリーに属し、その理解・設計の土台となります。また主役のコアセルベートは、シャンプーやリンスで毛髪に吸着して感触を与える成分としても知られ、本成果は日用品・パーソナルケア製品の処方設計にも通じます。さらにこの液滴は、膜をもたないながら内部に空洞や膜構造という"仕切り"を併せ持つことから、生命の起源に迫る「原始細胞(プロトセル)」の物理モデルや、機能性分子を閉じ込めるドラッグデリバリー(DDS)・合成生物学の基盤としても期待されます。

なお、本研究は、JSPS科研費(24K08059)およびJST A-STEP(JPMJTR24UF)の支援を受けて実施されました。クライオ電子顕微鏡(Krios G4)による測定にあたっては、岡山大学 コア・ファシリティ・ポータル(CFPOU, RIIS-n01)および同大 構造生物学研究拠点の協力を得たほか、触媒科学共同利用・共同研究拠点の支援も一部受けました。

掲載情報

雑誌名 :
Langmuir(American Chemical Society)

タイトル:
Void-Bearing Hierarchical Coacervates in the Decylammonium Bromide/Sodium Salicylate Vesicle-to-Coacervate Pathway

DOI:
10.1021/acs.langmuir.6c03090

URL:https://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/acs.langmuir.6c03090

用語解説

ベシクル :
界面活性剤などの分子が集まってできる、閉じた袋状の膜。細胞膜やリポソームの基本の形です。

コアセルベート:
分子が濃く集まってできた、液体のような濃い相。今回はこの内部に空洞があることがはじめて分かりました。

液-液相分離:
一様に見える溶液が、濃い相と薄い相の二つに分かれる現象。

クライオ電子顕微鏡:
試料を凍らせたまま観察し、内部のナノ構造を高い分解能でとらえる顕微鏡。

お問合せ:
〒756-0884 山口県山陽小野田市大学通1-1-1

TEL0836-88-3500